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东方外来韦编/2024/兽王园访谈

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  • 该内容于杂志中页数:016-021
  • 翻译:


東方獣王園ZUNインタビュー
久くぶりの対戦STGとなった「獣王園」は、いかに作られたのか。
過去最大級の物量で組み上げられた作品の思い出を、
思い入れたっぷりに語ってもらった。
——
本作の開発のきっかけからおうかがいします。
ZUN
また「花映塚」っぽいゲームを作りたいとずっと思っていて、だいたい「鬼形獣」開発時くらいから何作か作ったらまとめになるようなゲームを作る、ということで視野に入っていました。「花映塚」みたいなゲームを作ると作業量がものすごく膨らむこともわかっていたので、黄昏フロンティアさんにまたお手伝いいただこうと。黄昏さんが作るゲームも作業量がとても多いので、それが落ち着いたらこっちを手伝ってもらおうという約束をしていたんです。
——
なるほど。
ZUN
やっぱりまたお祭りみたいなゲームを作りたかったんですよね。それに、こういうゲームを作るとキャラクターの整理にもなる。計画だけは立てていて、結果的にもタイミングとしてはちょうどよかったのかなと思いますね。やっぱり一人で作れるレベルを超えたゲームを作るとなると、計画を立てないとですし、そういうゲームも節目節目にはやりたいんです。
——
今回「獣王園」のおまけテキストで「AIが爆発し始めた昨年ごろ、ひねくれ者の僕は(中略)とにかく作業量の多い作品を作ろうとしたのが今作品です」と書いてらっしゃいました。以前からAIとどう向き合うかを課題にしていたZUNさんですが、この物量についうても予定のうちでしたか?
ZUN
物量は増やしたかったわけではなくて、キャラクターをたくさん出したかったから単純に増えてしまっただけですね。実作業を始めてみると、AIで世の中が変わっていこうというタイミングだからこそ、自分の手をかけて作業をしなければならないなと感じながら制作していました。
——
イラスト生成AIが大々的に登場して、ようやくZUNさんが言っていることが伝わった読者も多いかもしれません。実際にそれらに触れてみていかがでしたか。
ZUN
ChatGPTはじめ、いろいろ触りました。最初は面白いんですけれど、飽きるのも早かったです。イラスト生成してくれるAIも触ってみましたけど、やっぱりすぐ飽きちゃう。理由としては、やっぱり自分の手で描きたいんですよね。別に上手な絵がほしいわけじゃないし、必要ならネットで検索すれば足りちゃうし、結局作っても「自分のもの」ではないので、それが楽しくないんですよ。だから飽きちゃう。きっと音楽も文章もそうだと思います。会話相手にしたり便利なツールとして使う分にはいいけれど、物を作りたい「欲」は満足させてもらえない。もちろん売上的な意味では、これからAIを使った作品が売れるようになっていくでしょうけれど、自分としてはそこには興味は無いですね。ある部分の商売的には危機かもしれないけれど、クリエイティブな面では危機ではないんです。そういう雌雄は決したと感じています。やっぱり自分で作る方が楽しい。いいものが放っていても出るくらいだったら、下手なものでも自分で作った方がいいですよ。
——
ZUNさんの中ではAIとの戦いは終わったと。
ZUN
技術の戦いは終わってましたね。戦いの場が変わったんでしょう。こうしてみるとAIと自分の戦いは良いものを作る戦いではなかったんです。作りたいかどうかの動機をめぐる戦いだった。僕が技術を突き詰めることに否定的なのもそこで、技術を突き詰めた先はAIになるわけです。まあ、僕が言ってることは世の動きとかとは離れた僕自身のものなので、世間的にはこれからAIと戦わなければいけないんでしょうけれども。AIが良いものを出すから創作意欲を無くす、みたいなことが良くなかったわけです。もし自分がそうなってしまったら、ということを懸念していた。自分が作る必要がなくなってしまうわけですからね。自分がやらなくてもやってくれるのが一番いい、と思えるとAIが主役の世界に行ってしまうわけです。もしそうだとすると、子供が下手な絵を描いてるところに「こんな下手な絵を自分で描くくらいならAIにやらせたほうがいい」って言う世界になってしまうじゃないですか。でも、下手くそだって言われようが関係ない、描きたいから描くんだっていうのが僕の理想なんです。やりたいことをやれる人生じゃなかったら……。たとえば「お金に結びつかなかったら描けない」っていう考え方もあるでしょうけれど。まあ、そういうテーマが「獣王園」にはふんだんに入っているわけです(笑)。社畜である畜生界と、なにもなくて全てが自由な地獄との戦いだったんですねえ。
システムについて
——
「花映塚」のようなお祭りゲームを作るのが目標だったとお話されましたが、今実装されてるモードは想定通りでした?
ZUN
いえ、ゲームにどういうシステムが乗っかるかは予定としては全くわかっていなかったですから、ちょくちょく変わっていました。許されるギリギリまで変わっていって、そういうことはまあ普通ですね。こういうゲームを作りたい! ってシステムから考えるヤツは作ってみるとだいたい上手くいかなくて(笑)、だからいいように変えていく。まあこれは僕の作り方かもしれないけれど、それに伴ってストーリーも変わっていくんです。変わっていくことの方がいいと思っている。それが大切だと思っているから、作ってきたものを否定することはぜんぜん平気なんです。物を作る人は何パターンかいるだろうけど、大切なものを突き詰める人もいれば、大切だと思っていたものをコロっと捨ててしまう人もいて、どっちもそのクリエイターの個性だし、こだわりのあらわれなんです。
——
では「獣王園」のこだわりはキャラがいっぱい出ること?
ZUN
結局そこですね。そしてそのそれぞれのキャラクターが戦っていること。でも、お祭りとして始まったとしても、最終的にはお話としてまとまってほしいと思ったので、一つのストーリーに、結末に収れんするお話にしました。
——
進化したポイントですね。
ZUN
「花映塚」はどのキャラクターストーリーを進めても最後は説教されて終わりだったからね(笑)。
——
あれはZUNさんの「 (へき) 」なんじゃと思っていましたが。
ZUN
僕の性格の良くないところが出ちゃってたからね。でも、今回はそうではなく、それぞれが違う動きをしながらも物語的にはまとまっていくし、誰も「悪」として描かないように出来たと思っています。
——
今回プレイ感としては対戦型でありつつ、ストーリーモードでは普段の道中+ボス戦的な感触があって新鮮でした。
ZUN
結局、対戦ゲームとしては作っていないんですよね。キャラクターが多いストーリーモードがメインで、対戦「もできます」と。そしてそれが目指していた形だったんです。今のストーリーモードのようなバランスになるのもマスターアップ寸前でした。こうしたいと思っているけれど、良いバランスにするためには何回も試行錯誤をしなければいけないしぎりぎりの調整でそうするしかない。でも、普通に開発していれば大幅な調整に思える部分も、自分一人で開発しているから気軽に素早く対応できるのが個人開発の良い部分なんですよね。
——
被ダメージを1回キャンセルしてくれるバリアもゲームとしては新要素でした。
ZUN
調整の結果入った要素でした。それまではただ避けるだけのゲームだったわけですが、自分が弾を食らったらバリアを張りなおそうとするじゃないですか。バリアを張るためにはチャージアタックをしなければならないわけで、それは防御と攻撃が一体になっている、いやむしろ相手を攻撃させるために入れたわけです。それでも弾に当たらない人間は相手を攻撃しないだろうというのも見えているので、どうしても当たっちゃう弾が出るようにすることで、上級者にも相手を攻撃させるように誘導しています。
——
なるほど!
ZUN
このゲームで言うと防御が最大の攻撃なんです(笑)。細かい部分、そういうシステム部分は経験が活かされたなと感じています。避けたりパニックになってるときは防御したいじゃないですか。自分が余裕の時に相手を攻撃しても仕方がないなと思って、じゃあどうしたらいいんだろうって。そうしてできたシステムです。今回のゲームは絵や音楽もすごく多いわけですが、プログラムの量もものすごく多いので苦労しました。ネットワーク対戦はもちろん、ローカルの対戦もけた違いに量が多いのでもう大変。スクリプトだけで終わったりせずに、全部システムから作って調整も時間をかけて……やっぱりこういうゲームは少人数で作るしかないなと。物量がものをいうゲームを作れたと思いますね。
——
物量の次に苦労した部分は?
ZUN
それはもう、本当に面白いゲームになるかどうかです。ちょっと骨太なストーリーを用意したいとも思っていましたし、遊んだ後に満足感がある、そういうものを目指していました。作業感で各キャラのストーリーを見なきゃって思われるより、気づいたら全部読み終えてしまうようなものが理想ですね。今回は畜生界がテーマだったわけですけれど、あそこの住人は全員がいわゆる「社畜」なので、僕も社畜になったつもりで作りました。作業に追われる感じをがっつり体験しながら……(笑)。
——
ヤクザと構成員として描かれる彼らですが、やはりノルマが厳しい?
ZUN
ヤクザは強い組織で「反社会的勢力」と言われるわけですが、何に反しているかというと別の強い組織、政府に対してなわけですよね。そこで、政府がない状態だとすると、残ったのは単にガラの悪い人たちが取り仕切る、生活はブラックだけど反社会ではない、それが社会であるというのが「畜生界」なわけです。「鬼形獣」もそうでしたよね。
——
アンチAIとしての「獣」というわけではない?
ZUN
あそこに全く獣感はないですよね? そこは「畜生」だからなんです。畜生界も広い意味での地獄の一部ですから、中でも死ぬまで自分の自由もなく働かされる世界が畜生界。給料ももらえないし、あそこに堕ちた動物たちにとって厳しい地獄なんです。「鬼形獣」のときに畜生界ではヤクザが社会の中心となっている世界に対して、大きな敵が来たという話で……地獄に案内されているかと思ったら、畜生界の方だったという話ですからね。しかも操られて乗せられているという、今思うと難しいストーリーでした。
物語について
——
「獣王園」で、領土の所有権を霊が持っている、という話がベースにありました。
ZUN
この点は「花映塚」の逆になっていて、「花映塚」では幻想郷が幽霊であふれていたところが「獣王園」では幽霊がいなくなっている。いろいろな土地も、そもそもは誰かのものだったはずで、それをそうでなくしたのは () (また) の力だったと。重要なのは、実際にそこに居たり、住んでいたかどうかではなく「きっと誰かのものに違いない」ってみんなが思っている世界だったんです。今の世の中だって、その辺に落ちているものを自分のものとは思わないじゃないですか? 幻想郷では自然そのものを誰かのものだと思っていたんですが、そういう感覚が失われた、解放されたっていうことなんですね。だから争奪戦になったと。基本的には誰かが手に入れたというわけではなく、ただ勝手に住み着くわけです。そういうことをけしかけたやつがいる、それが残無。本来であれば騒ぎになることはなかったことなんですね。もう古くなりすぎて、どんな霊が持ち主だったのか考えもしなかったようなもの、もしかしたら初めから所有者の霊なんてものは居もしなかったかもしれないけど、そういうものだと思い込んでいた。そういう感覚を千亦がすっぱり切ってしまった。誰の所有かもわからないものを「無に帰した」結果、取り放題になってしまったんだけど、それに気づく奴は誰もいなかった。そこに今回のラスボスである残無がけしかけてきて、畜生界の霊たちを動かしてきたわけなんですね。
——
残無としては成功した?
ZUN
そうですね。あいつに勝つことはできない。何をやっても自分の想定内っていうタイプ。だから「勝つ必要がない」。世の中にはいろんな人がいるんですね、「こうしたい」っていう人がトップになったら挫くのは簡単だけれど、残無みたいな人がトップになってしまうと誰も逆らえない。それが、今回のゲームの中で一番面白くて魅力的なところなんです。手のひらの上ですべて動かしていたって言いたいタイプで、欲がない。地上がひどい目に遭う前に保護下に入れた方がいいのではということで動いたんだけど、それは欲というよりは使命感からなんです。でも欲がないから、ちゃんとやらない。欲と結びつかないから、支配もしない。
——
これまで異変を起こす側は、なんらかの欲が起点になっていますよね。
ZUN
そうだね、いつもちょっとした小さな欲から始まってる。でも今回はないんです。主人公がいっぱいいるから。ストーリーを作る時に「霊夢VS異変」だったら簡単なんだけれど、そうじゃないのを考えるときは、誰かすごい悪い人がいて戦ってきます、は作れるけれどゲームで遊ぶ側はつらい。毎回同じボスと同じ理由で戦う事になっちゃう。こんなにキャラクターはそれぞれ全然違う性格なのに、悪いやつを倒す理由だけは一致して戦うのか?って。だから、そうじゃないストーリーにして、それでも一体感を持たせるにはどうしたらいいかっていうのをやってみたかったんです。
八雲藍
——
藍は過去の因縁が語られたおいしいポジションでした。
ZUN
今回は「鬼形獣」の続きでもあるから、畜生界に関わるキャラを入れたいわけです。
——
「八雲藍」は九尾の狐に紫がつけた式神のことで、畜生界にいるのはあくまで動物「霊」なんですよね? ということは、元の狐は動物霊だったんですか?
ZUN
まあ幻想郷では霊体であるか肉体を持っているかには、大きな差はないんですね。ただ、畜生界に居る動物霊は絶滅した動物たちを中心とした霊なんですが、実態を持っているのは幻想の霊なんです。ちなみに藍が計算が得意なのは畜生界で鍛えられたからで……やっぱり社畜だったんでしょうね。そして、そういうのが嫌だったんだろうなあ(笑)。
——
ちなみに「藍」は式神の名前でしたよね?「橙」は猫股に憑けた式神の名前で。それとも「八雲」を名乗らせてる? 元の九尾の狐としての名前を饕餮は知っているのでは?
ZUN
そのあたりは謎です。なんで紫に仕えているのかもわかんないですね。本作で見たような感じで、妖怪の中では動物に関連している――妖獣みたいな奴らはロクでもないのが多いんですよ。一癖もふた癖もあって、勝手に動く。身勝手な奴が多いんです。藍もそういう奴かもしれない……というのが、今回彼女が登場した理由でもあるんです。
——
八雲一家のご主人は寝てばかりなので、藍の「社畜」化は進んだのでは?
ZUN
むしろ理想なんでしょう。だから自ら進んで社畜をやっている。そこが藍の畜生の部分なんでしょうね。そうすることしかできないんだけど、命令する側は嫌だったんでしょうね。畜生界の組長たち、トップに君臨するような幻獣たちは、みんなトップに立ちたいとは考えていないんです。でも立場上そうせざるを得ない。なりたくてなってる奴もいるけどね、早鬼とか(笑)。あいつも裏表がなくて、別に馬鹿ってわけでもないところが面白いですよね。曲を書いててもシンプルで楽しかったな~、シンプルにし過ぎてちょっとどうかとも思ったけど、その軽さが今思うと良かったなって。
——
そういうボスラッシュみたいな部分、キャラも曲も次々出て来るプレイ体験が楽しい作品でした。
ZUN
キャラクターの魅力を押し付けるゲームですから。そしてキャラクターの魅力を高めることは、STGの魅力を高めることとイコールなんです。自分の中で理想に近づいてきているなと思うのは、今回の「獣王園」と全く同じシステムで同じようなゲームを作ったとしても、おそらく東方のキャラでやらないと面白くならないんじゃないかなって。今作っているキャラクターたちがこういう話を見せることそのものが面白さになってきている。この感覚は、理想に近づいてきてると感じています。ようやくここまで表現できるようになってきたなって。
新キャラの話
ZUN
僕の中では一番大丈夫かなって心配してた、ちやりが皆に受け入れられてよかったです。剛欲同盟にいるキャラクターってどういうヤツだろう? って考えて作ったけどちょっと不安だったんですよね。もちろん他の組もどういう奴を部下にするんだろうって考えるのが面白くもあったわけなんですけれど。
——
血の池地獄って、どういう地獄なんでしょう。
ZUN
「剛欲異聞」のストーリーで言うと、なかなか厳しい場所ですよ。人類が生まれる前から厳しい場所だったんじゃないかなと。地獄の中でも一番ひどい場所、生命として最後に行く場所です。でも霊魂だと最後の場所でも終われないから、続いてしまう。そういう昔話も廃れてしまって旧地獄も廃れてしまい、じゃあ新しい地獄に何があるかというと……本当にただの地獄があるだけだったという
——
地獄と同様に「 (てん) () (じん) 」もだいぶ廃れているのでは……。
ZUN
ほとんどの人が知らないよね。僕も知らない(笑)。血と火を使う妖怪があまりいなくてね。探してたんですけど、見たこともない妖怪がいた。とはいえ僕の中のテーマではチュパカブラのつもりなんです。でも、ちやりも他の2人と同じくメジャーな妖怪そのものにするつもりはなくて、それになぞらえられるキャラとして天火人にしたんです。なんなら漫画でチュパカブラ出してますから、もっとちゃんと妖怪にしたかったんです。
——
癖のある性格も、対戦での強さも人気のキャラです。
ZUN
怨霊はそれだけ強いってことなんでしょうね。「剛欲異聞」の時から出てますが、血の池地獄にある血は全部怨みの血なんです。「智霊奇伝」もそうだし、妖怪の怨みの力はすごく強いんですねえ。でも怨みの力はいずれ負けるんです。ただ、ちやりも何の怨みがあるとかではなくて、怨みが集まって、このキャラ絵に描いてある鬼火になっている。そんな、誰のための、誰に向けた怨みかもわからないものが集まって力にしているのが天火人なんです。その怨みも果たされないまま、どんどん地下に潜っていって、地下にたまっていったものが――石油なんです。
——
怖い話ですね。
ZUN
それをもう一回燃やすからさ。怨念が世界に広がって……っていう想像をすると話は描きやすいけれど、もうファンタジーとして書きづらいですからね。まあ、「剛欲異聞」の依神姉妹はそういう理由で中東っぽい衣装になっているけれど、あまり寄りすぎないように気にしながらやっています。石油王っぽさはあるけど、宗教っぽさはなくしてほしいみたいなお願いして描いてもらって。でも、有機物を燃やすことの恨みは、やっぱりあるんじゃないかなと考えてしまいますね。
——
慧ノ子はデザインが目を引きます。
ZUN
いいでしょ~? ラスボスとセットで考えているので、すごくいいキャラになったと思っています。それまではただの獣だったのが……、というね。ラスボスを持ち上げるためのキャラではあるんですが。実際に絵を描くまでは、ケルベロス要素は全然なかったんですけどね。ケルベロスを出すつもりはないけど、ぽいのは出したくて。彼女は絵を描いたときに自分でもびっくりしてですね、こういう絵を描いたから結果的に今の設定が生まれたという……。
——
その順番だったんですか⁉
ZUN
もし自分がケルベロスを描くとしたら、どう描くかなと。頭3つはちょっとな……からのトラバサミはいいな、となって。遊び心の産物ですね。あれを手に付けるなんて、カワイイなと。新キャラの中では本人の記憶がない、切ないキャラなんです。動物であったころの記憶しかないんだけれど、それもほとんどなくて。一番若い妖怪だけど、年老いた狼だったという……キャラ的には物語性があるポジションです。動物なんだけど残無に歯向かったことがあるので、罰として森で生かされる。残無はいじわるですからね。
——
孫美天について。猿を操る?
ZUN
猿山のボスですからね。そして猿もおだてりゃ、いろんなところに登るという……(笑)。すごい利用されちゃうキャラだけど、自分は躍らせてる側だと思って酔っているのが半分くらい、楽しければ何でもいいやと思ってるのがもう半分くらい。東方では孫悟空を出せない、幻想入りしてないので孫悟空「と言われてる」キャラを出すのが大切だった、そのバランスが楽しかったですね。聖徳太子は創作にはほとんど出てこないからよかったけど、孫悟空は創作に出過ぎですし。格好も、山姥と接点を持たせたりしてね。ネムノとだいたい同じ服装してますよ。あれは「端切れ」を表現していて、みすぼらしい格好という。
——
幻想郷の「聖地」の概念とは?
ZUN
ネムノが聖地を作る能力があるのでね。聖地とは、誰の持ち物でもない場所なんです。誰にも所有権がない。だから今回の騒動でも場所的には浮いてたんです。それを見つけてけしかけたのが八千慧……と思わせるように残無が裏から操っている。
——
頭の (きん) () () は締まるんですか?
ZUN
これはコスプレなので締まらない。棒も伸びないです。ちなみにこの棒は試験管みたいになってるんですが、理由はよくわからない。ちなみに、新キャラたちは立ち絵の向きがボス側に立った時が正しいというか元々の向きになるように描いています。自機キャラはボス側の時は反転してる。
——
日狭美は、地獄の「キャッチ」だと設定にはありましたが。
ZUN
ヨモツシコメはキャッチでしょう(笑)。キャッチの報酬って、なんだろうね……お金がもらえるわけじゃなさそうだよね。彼女については僕もわからないことが多いなあ。地獄は、なんもないんですよね。それこそが地獄なんじゃないかなって。地獄はカリスマだけがいる世界なんです。それ以外は「無」なの。鬼はヒーローだけど、それ以外はヒーローではない。入っていった人間達は全部消えていく。
——
残無、人間を称するときもありますが鬼ですよね?
ZUN
今の残無は鬼ですね。すごくいいキャラクターが出来てよかったです。セリフも書いていて一番楽しかったですね。残無は何かを言っただけで勝手に周囲に影響が出る、くらいの存在感を持っているところが気持ちいいんでしょうね。獣たちを支配しているようで、支配してはいない。
——
残無にとっての地獄とは?
ZUN
仏教の死生観の話になるんですが、なんなら自ら地獄に行って死を隣に置きたかったんです。ちょっと一休宗純と被っている。名前は最後まで迷いました。実在の人物の名前をほとんどそのまま使っているし……もっと別の名前にするつもりでずっと「残夢(仮)」にしてたんだけれど自分の中のイメージがもうそれに固定されてしまって、元の名前の印象も強すぎて、もはやそこから離れられなくなってしまった。最終的にちょっとだけ変えて残無に……何も残らないことにしたんです。無惨の「惨」を使おうかと考えたこともあったけど、鬼でその名前だと「鬼滅の刃」っぽくなっちゃうんでやめました。
——
「虚無を操る」とは?
ZUN
言葉にするのが難しいな、なんとなく伝わると思うんだけど、やっぱり「無」だから。あいつが何をやってきたかは「無」のときに出てくるんだよね。そしてそこを操ってきたんじゃないかな。操るっていう言い方がおかしければ、いいようにしてきた。今回は全部の土地の所有権が無くなるっていうスタートで、そこを誰が奪うかっていう話だから、その無くなった状態を操りに来るのが残無と。いいようにやるし、結果もいいようにする。そういう奴。
——
「獣王」は残無を指す?
ZUN
畜生界たちの奴らをまとめて言ってます。動物園的な意味合いですね。「霊長園」に対する「獣王園」。
——
サブタイ「Living Ghost」とは?
ZUN
動物霊たちもいながら、そうではない生きてる人たちもいる世界。生霊です。そいつらが土地をとるかどうかっていう話だからね。そしてそれは動物の霊や生きてる人たちが望んでいる夢は達成されない、ということでもある。
——
それで「逸脱者たちの無礙光(むげこう)」?
ZUN
昔はオタクの事を「逸般人」って言う文化がありましたよね。そういう人たちにあまねく届く、ありがたい光であると。残無は鬼だって言ってるけど、人間も鬼も同じなんです。人間に一番近い妖怪が鬼なのかもね、東方だと。「獣」という体でいろいろ詰め込んじゃいましたね。哺乳類を超えた存在として鬼がいるかもしれないし。
——
自分たちで「霊長類」って言ってしまう人間ですが。
ZUN
分類を作るなら自分たちを一番上に置くのは不自然ではないけど、上を考えない事は恥ずかしいかもしれないね。そこに鬼がいるかもしれない。なんなら別のものに支配されたい欲も満たされるし。そういう自分を認めてもいい、なんなら畜生界もそういう所だったわけです。社畜になることもいいだろう、と。そこからより自由だけど、もっと自分の管理下に入らないか、大きな世界の一部にならないかと言われるのが、地獄なんだな東方では。
——
地獄にどっぷりな人も多そうです。
ZUN
旧地獄は温泉街で幸せそうなのにね。あそこはヤクザがいて酒飲んでギャンブルやってるだけなのに(笑)。東方って楽しいね。なんなら今の人の世が面白いから、どこの世界を使うか、どこを表現するかで面白くなっちゃう。やっぱり今が一番面白いんだよね。今の世の中を自分のフィルターを通して出すのは他の人に真似されないし、AIにもできないし。
音楽の話
——
「獣王園」は2分からが本番、みたいな曲が多くないですか? そしてその2分くらいからが結構今までにない。
ZUN
いわゆるボス曲として作っていないからですかね。全体的に道中曲として作っているので、冒頭に盛り上がりを持っていってない。そうじゃないと飽きちゃうから。それはそれとして、「獣王園」全体として言えるのが、今までやっていなかったことにチャレンジできた作品だったということなんです。音楽も新しいことをいっぱいやっていて、それができてよかったなと思っています。遊んでくれたみんなのなかでは、特にそうは思わなかったかもしれないけれど……僕の中では新しいことをいっぱいやっているんです。新しいことをするってやっぱり楽しいんだよね。ドキドキして怖いこともあるけれど、ワクワクして楽しいことの方が多い。それが「獣王園」のテーマだと言ってもいい。キャラクターたちも、みんなワクワクしていたはずなんですよ。最終的には新しいことに出会って、楽しんでいたんだろうなって。
——
なるほど。
ZUN
道中が無いっていうことは「これだけの時間でこういう敵が出てきて、それに合わせて演出をする」みたいな指針が無いんです。だから僕もどうしようかな~みたいな感じでね。やっぱり楽しい曲の方がいいよね、単純にいい曲ということではなく、感情がちょっとずつ動くような。楽しかったり明るかったり暗かったり怖かったり、それをちょっとずつ表現してるのが楽しい、表情豊かな音楽だろうと。そういうのにしよう、というのが今回の曲作りでの方針みたいなものだったんです。うまくできていればちゃんと伝わるし、そうでなかったらチグハグに聴こえるかもしれない。「世界は可愛く出来ている」は、そういう挑戦の中でも特にお気に入りです。
——
従来と同じようでありながらも新しさを感じるところはありました。
ZUN
もう学ぶとかじゃなくなったからかもしれない。音楽に関しては、次に作るものは自分の中から出てくるものにしようとしているんです。もちろん、ほかのことは常にたくさん学んでいますよ、学ぶことだらけです(笑)。でも音楽は自分の中で完結する傾向にあります。学ぶとしても過去の自分かな。他人から聞いてどうこうすることが無くなった、というより「無くさないといけなくなった」。僕は本を読むのが大好きで、いろいろな勉強をずっとしていますけれど、いつまでもそれではいけないんだなと。いつまでも他人から学んでいてはいけない時が来ているんだと感じています。理想としては演奏することかもしれないけれど、それはそれで技術を学ばないといけないですよね。そこについては僕は諦めかけていて、自分の中の憧れと、自分が手掛けるものが分かれてきている。本当はやりたかったけれど、そうではない。トランペットも吹きたいけれど、今更やるのもなって。
——
ある意味で少し自由になったと。
ZUN
音楽については他人の真似をしなくなって、自分の真似をするようになったんだね。東方っていう曲はこうであり、それは自分の中に求めていく。「虹龍洞」の時は家にこもっての作成で、次の「バレットフィリア」は今度こそ真似しなくていい、に入ったタイミングだったのかもしれないですね。全部自分の思うがままに作ればイケるんじゃないかって。
——
「バレットフィリア」に比べれば「獣王園」は手加減すら感じますね(笑)。
ZUN
でも「獣王園」も曲の流れとしては同じで、自由にやろうと。
——
今後は弦楽器の使用をどんどん求められてきそうです。
ZUN
使いたいね~。二胡は大好きだけど、「タイニーシャングリラ」は二胡のための曲じゃないのにそれっぽく聞こえるじゃないですか。それはアタックの強いパートを弾かせてないからなんですよね。チャンチャン!っていう部分ね。あの部分があることでとても東方っぽくなるんだけど、それ以外を二胡にやらせることで中華っぽさが出る。でもこういうのは僕の中での技術に過ぎないんです。まあ、既存キャラの全曲を作り終えて、ようやく「獣王園」新キャラ1発目だー! っていう気合が乗ってるのは確かですけれど(笑)。
——
いま「妖々跋扈」のアレンジを聴くことになるとは思いませんでしたが、アレンジされることが多い曲ですよね。
ZUN
お気に入りなのは間違いないんですけどね。シンプルで早くてリズム感がある。今そのままお出しするのは恥ずかしいので、アレンジだったらいいかなって(笑)。元のデータも残っていなかったので、一から作り直しましたけど(笑)。早苗の曲も残ってなくてさ……。
——
道中が無いといいつつも、常にボスと戦い続けるので次々とボス曲が流れる、みたいな楽しさもありました。
ZUN
まあ元の曲が良くないとね。いや、自画自賛じゃなくてさ。僕の中での大切な部分で、ゲームを楽しんで遊ぶときには良い曲であってほしいと思ってるから。曲が流れているだけで、多少ゲームのバランスが悪くてもゲーム体験としては良いものにできる。曲さえよければクソゲーでも許されると思ってる。
——
「トータスドラゴン」もけっこう変わっていましたね。
ZUN
「鬼形獣」版よりもだいぶテンポアップして気持ちよくなってます。BPM自体は一緒だけど後ろのビートがすごく早くなってる。「鬼形獣」は4面の道中が速かったので、ボスはどっしりボスらしく見せるためにゆっくりだったんです。でも、この曲のポテンシャルはあんなものじゃない、と今回見せることができたんじゃないかな。お気に入りの一曲です。もちろん、他の曲もいろいろと手が入っています。ただ饕餮の曲は本当はラスボス版のほう(※「有機体全てのメメント ~ Memory of Fossil Energy.」)を使おうとして海豚さんにもOKをもらってたんだけど、あっちの曲だと強そう過ぎて本当のラスボスに見えちゃうから、あえて中ボスのほう(※「強欲な獣のメメント」)に変えました(笑)。ラスボス版だと曲の感情が強過ぎちゃうんですよね。ちょっと恥ずかしくなるくらいカッコイイ曲なので、おまけで出したらだめだろうと。
——
そんな事情があったんですね。
ZUN
作曲の時はすごく気合が入ってたんです。饕餮の曲は――ゲームの完成が伸びたことはさておいても、かなり先行して作っていて、僕の中にはしっかりしたイメージとしてあったんですよ。「血の池地獄と石油を結びつける世界観で、すごく不気味でどうしようもない曲を作ろう」というもので、とてもいい曲が出来た。気合が入りすぎて、感情的すぎる曲ではあるんだけどね。でまあ、そんなに多くの人は「剛欲異聞」遊んでないだろうからビックリさせてやろうかな、くらいの気持ちで最初は「獣王園」に入れるつもりだったんだけど、曲が強すぎて使えなかった(笑)。ちょっと入れてみたら、あまりにも突然にラスボス戦が始まったので止めた(笑)。気になった人はぜひ遊んでみてください。1周目では流れないんだけど、あの曲が流れるところまで遊んだらとても面白く感じてもらえると思います。
終わりに
——
今回の話も解決してるようなしてないような。
ZUN
みんな何と戦ってるのかもよくわからないし、何が起きてたのかもほとんどの登場キャラはわかっていない。「花映塚」はもっとストーリーが無かったんだけど、それは僕の反省ポイントなんですよね。パーティーゲームのストーリーを作るのって難しいんです。黄昏さんの作品とかを作る時もそうだけど、全キャラのストーリーを描くじゃないですか。ラスボスは全部同じ相手になって、どういう話にしようかな、どうしたら全キャラが同じラスボスと戦う話になるだろうかって。「花映塚」もラスボスが決まってたから、主要なキャラは強そうなキャラを登場させたらお話が描けないと思って、雑魚っぽいキャラばかりを選んだんですよ。そこも反省点だった。
——
そんな理由が。
ZUN
今回は最初からストーリーを成り立たせるためにボスっぽいキャラをたくさん入れてたのでそこはクリアできたかな。「花映塚」の時もストーリー自体は出来たけど、もっと書けるだろうってね。黄昏さんのゲームだとラスボスをプレイヤー視点にすると、最後のボスは霊夢にするしかないから毎度霊夢がラスボスになる……っていうのを数回やってるうちに、やっぱりそれは違うんじゃないかってなって。もっと変えないといけないなと、試行錯誤していったのが「深秘録」でした。霊夢をラスボスにする意味を持たせたんだよね。あれは霊夢を使って最初はラスボスまで行かない。ストーリー的にしっかり意味がある立ち位置で出てくるじゃないですか。「獣王園」でもああいうのを目指したところはあったんです。「憑依華」になってくると、もっと自由になって物語的にはラスボスは誰でもよかった。でも僕の中では依神姉妹が良く出来ちゃったので、あいつらがラスボスで良くなっちゃったんですよね。おまけで夢の世界に入っていく(笑)。ストーリー的にはあっちのほうが正しいですよね。そこから次のパーティーゲームを考えた時に、やっぱり霊夢をラスボスにしたかったんだよね(笑)。
——
(笑)。
ZUN
だから霊夢が何故ラスボスであるかを考えて、ああいう物語になったんです。でもゲームとしては最初は霊夢からプレイする事になるし、よくわからないまま、とにかく残無に辿り着いちゃう。いろいろなことを思わせぶりに提示しておきながら、放っておいてね。そんな霊夢がお話の最後に敵として出てくるっていうのが僕の作り方なんです。霊夢はラスボスとして出て来るけれど、別にラスボス感があるわけではないですよね。でも、最後に唯一残無で戦うときには霊夢がラスボスとして出てくる。そこでしかないような弾幕が出てくる。そういうのがやりたかったんですよね。
——
作り終えて、どうですか。
ZUN
毎回作り終わると思うんですが、楽しかったですね。キャラクターのことや作った理由とかはもちろん覚えているけれど、作った時の「やらなければいけない」感はびっくりするぐらい無くなってて。あの時必死だったのはなんだったんだろうって……そこには自分の大切なものはないんですね。結果にもなくて、そこに居たことが大切。やっぱり作ってる瞬間っていうのは、作ることしか考えていないし、その時のためにあるんだなって思いますね。
——
今見えることは?
ZUN
今後いいものを作るためにって、どんどんAIは使われていくでしょう。商売をするために、儲けるために、経費削減するために。そして、お客さんたちは「良いものが欲しいだけなのに、楽しいもの=AIを規制したりなんかするな」って言うでしょうね。でも、僕としてはそういう土俵に乗っかることはないような生き方をしてるし、今後もそうでしょうね。
——
「鬼形獣」からの大きな予定が終了したとも言えます。
ZUN
僕は人生で一番楽しいのはものを考えるとき、勉強するときなんですよ。何を見ても勉強なんですよ。何かのために勉強するんじゃなくて、純粋に勉強するときに世界はキラキラ輝いてる。でも物を作り始めるとそういうわけにはいかなくなって、「作るため」のフィルターがかかっちゃう。そのフィルターがかかっていないときは、物を作り終えたあとの一瞬にしかないんです。そう思って、今をとても楽しんでいます。